第11章 ドキドキ期末
──夏休みに林間合宿
朝のホームルームでその話が出た途端、教室の空気が一気にざわめいた。
しかも、“赤点を取った者は不参加で補習”という、担任の鬼ルール付き。
『なんか、うちの学校ほんと油断ならないな……』
ぼそっと呟きながら教科書をカバンから取り出す。
中間の順位は二位だった。油断はしてないけど……さすがに緊張感が走る。
そんな時、すっと机の前に影が落ちた。
「……星野、少しだけいいか?」
『あ、常闇くん。うん、なに?』
「期末の……筆記で苦戦しそうな科目がある。もし時間があれば、教えてほしい」
『もっちろん!どの教科?』
「……数学と、あと英語。長文問題が特に、な」
『おっけー、任せて!ノートもまとめてあるから、あとで見せるね』
彼は静かにうなずいた。
「助かる。……お前のように“光”を放つ者は、俺にとって眩しい存在だが──
それでも、その光の傍に立てるよう、俺も強くなりたいと思う」
『っ……なにそれ、ちょっとキザすぎない?』
ふっと笑うと、常闇くんも少しだけ口元を緩めた。
──こんな風に言ってくれる仲間がいること。
それだけで、ちょっと心が強くなれる気がする。
『じゃあ、昼休みにでもゆっくりやろっか。食堂で』
「わかった。感謝する」
その返事を最後に、1限目のチャイムが鳴った。
教室に先生が入ってくる。教科書を開きながら、私はそっと心の中で呟いた。
(……この夏、絶対に合宿、行こうね)