第11章 ドキドキ期末
席に着いたばかりの教室に、
がらっ、と相澤先生が入ってきた瞬間、空気がぴしりと引き締まる。
「……お前ら、席につけ。今日は伝えることが多い」
先生の低い声が響くと、さっきまで賑やかだったクラスが一気に静かになった。
みんな、それぞれ真剣な表情をしている。
「まずは期末試験についてだ」
「……うっ」
誰かの小さな呻き声が聞こえる。
瞬時に察するに、たぶん、上鳴くんあたり。
「実技と筆記、両方ある。範囲は今朝のプリントを見ておけ。出題は各教科の担当だ」
先生が机の上に資料を置きながら、さらりと続けた。
「そして──期末が終われば、夏休みに入る」
ざわっ……と空気が揺れた。
「ただし」
その一言で、全員の息が止まる。
「林間合宿に行けるのは、赤点を取らなかった者だけだ」
「ええええええええ!?!?!?!?」
クラス中が爆発した。
まさに、叫びと悲鳴と絶望の嵐。
「マジで!?補習なんて絶対やだ!林間合宿って、絶対なんか特別訓練とかイベントあるやつじゃん!!」
「え、うそでしょ!?先生、それ本当!?冗談じゃなくて!?」
「やば……筆記死んだら終わるじゃん……オレ……」
心の中でこっそり拳を握る。
ヒーロー科の合宿ってことは、普通の夏休みじゃない。
きっと、あたしたちにとって“次のステージ”みたいな時間になるはずで──
「当然だが、補習組は学校に残って補講を受けることになる。時間も拘束されるし、合宿の内容には一切参加できない。覚悟しておけ」
「「はーい……」」
一斉に落ちるテンション。中には泣きそうな顔の男子も。
でもその中で、誰よりも前向きに背筋を伸ばしていたのは──
「……負けませんわ」
真っ直ぐにそう言ったのは、八百万さんだった。
それを見て、隣の耳郎さんや葉隠さんが「よーし、気合入れようか!」って笑っていて。
久しぶりのクラスの空気は、やっぱり心地よくて。
だけど同時に、あたしの中に少しずつ緊張感が生まれていくのがわかる。
“テスト”っていう、分かりやすい壁。
ここを越えなきゃ、その先に行けない。
でも──
『絶対行く、林間合宿……!』
握った拳に力を込めたあたしに、ポンと肩を叩いたのは常闇くん。
「ウィルホース。共に、合宿を勝ち取ろう」
その言葉に、思わず笑って頷いた。