第11章 ドキドキ期末
数日ぶりに通る、見慣れた通学路。
変わらない景色だけど、校舎が見えた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなる。
『……ただいま、って言ってもいいのかな』って、自然に思った。
職場体験を終えた初めての登校日。
いつもの制服に、いつもの靴。何も変わってないはずなのに、
あたしの中には、確かに何かが変わった気配が残っていた。
昇降口で靴を履き替えて、教室のドアをそっと開けると──
「「あっっ!!!」」
一気に視界がクラスメイトで埋まる。
まるでアイドルの囲み取材にでもあったみたいで、心臓がバクバクした。
「おいおい!ウィルフォースじゃんか!」
「テレビ見たぞ!?あの羽根の人だろ!マジでかっこよかった〜〜!!」
「てか、隣ホークスだったよね!?え!?あのホークスと!?」
『ちょ、ちょっと待って、一気に言わないでよ……!』
その中で、真面目な顔で話しかけてくれた飯田くん。
「すごかったよ、君の個性。光で封じたあの動き、計算されてたんでしょ?」
優雅に微笑む八百万さんの顔は、まぶしくてまるで光みたいだった。
「さすがです!私感動しましたもの」
でも、不機嫌そうに背もたれに寄りかかった勝己は、ちらっとあたしを見て――
「……別に。テレビ映ったくらいで浮かれんなよ」
『うん、浮かれてなんかない。けど……見ててくれたんだ』って、胸がじんわり熱くなった。
そのすぐあと、焦凍があたしの横を通りすぎながら、ぽつりと言った。
「……おかえり」
その一言に、小さく心が震えた。
──あたしだけじゃない。みんなも、ちゃんと前に進んでるんだ。
教室に戻ったその瞬間に、はっきりわかった。
『……負けてられないな』
静かに呟いたその言葉は、あたしの胸に強く響いた。
もうすぐ期末試験がある。
でも、怖くなんかない。
この数日で手に入れた自分を、ちゃんと証明したい。
ヒーローになりたい。
誰かの光になりたい。
それが今のあたしを動かしてる。