第4章 優しさの証
金属の扉がガラリと開いた瞬間、演習場にいたみんなの視線が一斉に私に向いた。
(……うわ、見られてる……)
黒の合皮ショートパンツに、ぴったりとしたブラトップ。
その上に羽織ったノースリーブのジッパーパーカーは、前を少しだけ開けている。
ちゃんと、ちゃんと動きやすさと実用性を考えて選んだ――はずなんだけど。
硬くなった足をなんとか一歩、また一歩と前へ出すたびに、周囲のざわめきが広がっていくのがわかる。
少し早くなった鼓動を押し隠すように、笑ってみせた。
「想花ちゃん、かっこよすぎ……!」
お茶子ちゃんの声が、ぽそっと弾むように聞こえた。
「いやいや、美人すぎでしょ〜反則だって……!」
三奈ちゃんの目がキラキラしてて、なんだか照れる。
後ろからは「神……」と語彙を失った峰田くんの呻き声と、
「しんど……」って上鳴くんが仰け反りながら倒れそうになってるのが見えた。
『そんなに見られると、照れるんだけど……』
冗談っぽく言いながらも、内心はほんの少しだけくすぐったくて、でも――嬉しかった。
だってこれは、誰かに“認められる”っていう感覚なのかもしれないから。
そのとき。
「よぉし、みんな!準備はいいかい!」
響き渡るあの声とともに、まるで演劇の幕が上がるように――
オールマイトが現れた。
「ヒーロー基礎学は、わたし、オールマイトが担当する!!」
完璧な笑顔と、迷いのない拳。
あの伝説のヒーローが、今この演習場に立っている。
目の前に、ほんとうにいる。
「今日から君たちは、ヒーローとしての自覚を持って、実戦的な訓練を重ねていくことになる!」
言葉のひとつひとつが、胸に響く。
(……これが、ヒーローへの第一歩……)
高鳴る鼓動を抑えきれない。
目の前の景色が、夢のようにまぶしかった。