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【ヒロアカ】re:Hero

第10章 翼の約束


福岡の街に降り立った空気は、東京より少しだけあたたかかった。
潮の匂いがかすかに混じった風が吹き抜ける中、
私と常闇くんは、指定されたビルの前に立っていた。

『……ここが、ホークスの……』

「この街でも、あの人の存在感は絶大だな」

そう言って常闇くんがビルを見上げる。
確かに、ガラス張りのスタイリッシュな外観には、
どこか“最速のヒーロー”らしいスマートさがあった。

エレベーターを上がり、案内されたフロアのドアが開いた。

「よく来たね、二人とも」

軽やかな声が、私たちを迎える。

そこに立っていたのは、あの日と変わらない笑みを浮かべた――
プロヒーロー・ホークスだった。

赤い翼が、窓から差し込む光を受けてきらりと揺れる。
その姿を見た瞬間、胸の奥がきゅっと締まった。

(……やっぱり、あの夢は)

『……お久しぶりです』

思わず、そう言葉がこぼれていた。
別に、久しぶりに会ったことを明言されたわけでもないのに――
体が自然に、そう言っていた。

ホークスは目を細めて、いたずらっぽく笑う。

「うん、ほんとに。あの時から――全然、変わってないね」

『……?』

その“あの時”がいつなのか、彼は何も言わない。
でも、まるで全部わかってるみたいに。
夢の中の、あの声と同じように。

常闇くんが少し首を傾げながら、後ろで静かに様子を見ていた。
その気配が少しだけ、背中を支えてくれる。

「じゃ、案内するよ。うちの事務所、スピードは売りでも、ゆっくり馴染んでもらうのがモットーだからね」

そう言って、ホークスが歩き出す。

彼の背に揺れる羽根を見つめながら、私はそのあとに続いた。

(……本当に、あの人だったんだ)

けれど私は、まだ何も聞かない。
聞かなくてもわかる。
あの日、赤い翼で寄り添ってくれた“誰か”が――
今、私の前でまた、そっと手を差し伸べてくれている。

これからの日々で、少しずつ。
私はその答えを、自分の中で見つけていくのだと思う。
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