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【ヒロアカ】re:Hero

第9章 名前に込めた想い


職員室の扉をノックすると、相澤先生が無言で顎をしゃくった。

言葉もなく促されて、机の前に立つと――
ドスン、と机に積まれた分厚い紙束。

『……これ、全部……?』

「お前へのインターン指名の書類だ。目を通しておけ」

目の前にあるのは、想像していたよりも、ずっと現実味のある“評価”だった。
見覚えのある名前ばかりが並ぶ中、ひときわ目立つ、ある一枚。

「……特にここ。ホークスの事務所からの打診は、他と比べても群を抜いてる。正式な推薦依頼だ」

その名前を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと縮まる。

(……ホークス)

あの、夕暮れの裏通路。
体育祭が終わって、人の波から離れた、あの静かな時間。

『……君が、あの時のままだったから』

あのとき、まっすぐに私を見つめた彼の目が、頭から離れなかった。
記憶がなくても――私は、確かに“何か”を受け取った気がした。

速さ。
任務の正確さ。
常に先を読む力。
……そして、誰かをそっと支える優しさ。

(……あの人の背中を、もっと見てみたい)

ふいに、自分の心がそう言っていた。

『……ホークスの事務所にします』

そう口にした瞬間、胸の中の迷いが、すっと消えた。

相澤先生は少しだけ目を細めて、書類に目を落とす。

「……ああ。そう伝えておく。決して甘い場所じゃないぞ」

『わかってます』

だけど、それでも。
今の自分が行くべき場所は、ここだと、心が知っていたから。

私は深く息を吸って、積まれた紙束を抱え直した。
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