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【ヒロアカ】re:Hero

第9章 名前に込めた想い


食堂に入った瞬間、わーっと広がる人の波と、漂ってくるいい匂い。
昼休みの学食はいつもにぎやかだけど、今日はちょっと違って見える。

「おーい!席こっちだぞー!」
鉄哲くんが手を振って、奥の窓際のテーブルを指さす。

「ナイスゥ〜回原、ほんとに押さえてたんだな!」
「えっへん!俺、そういうとこ有能だからさ〜」

『すごい……もう結構いっぱいなのに』

「そりゃ、我らがヒロインのためですからね〜?」
にやりと笑ったのはもちろん物間。
ちゃっかり私のトレイを持って、自分の隣の席を指さす。

「さあさあ、想花嬢。お隣、どうぞ?」

『……あ、ありがと?』

なんとなく苦笑いで腰を下ろした瞬間、後ろの席から小さなどよめきが起きた。

「え、待って?その子……A組じゃない?」
「ほんとだ、体育祭の……!」
「やば、実物めっちゃ美人……」

「えっ、物間と付き合ってる!?」
「うそだろ!」
「いやいや、ないって!」

「も〜うるさいよ〜、そこ!」
拳藤ちゃんが笑って突っ込むと、B組メンバーが「わりぃわりぃ」と肩をすくめた。

「てかさ〜、想花ちゃんほんとにA組?めっちゃいい子なんだけど!」
「それな!気取ってんのかと思った〜」
「俺は最初からわかってたけどね?オーラが違うもん」

『ちょ、ちょっと待って!?なにそのイメージ!?』

思わず声を上げると、回原くんが「でもほら、すぐ馴染んでるし!」と笑ってフォローしてくれる。

「ほら見ろ〜、俺の人選は正解だったってことだろ!」
得意げな物間の隣で、私は苦笑しながらスプーンを握った。

……ほんの数日前までは、B組の中で笑ってる自分なんて、想像もしなかった。

『なんか、不思議だな』

ぽつりとこぼした私に、拳藤ちゃんがうんうんと頷く。

「でも、いいでしょ?うちら、意外と居心地いいんだよ」

その言葉に、自然と笑みがこぼれる。

『……うん。すごく、いい』

窓から差し込む光と、にぎやかな笑い声。
学食に流れる、あたたかな時間。

物間はというと、まだ得意げな顔でスプーンをくるくる回してたけど──

「なーに、勝手に主役気取ってんのよ。目立ちすぎ〜!」
拳藤ちゃんに後頭部を叩かれて、「ぐふっ!?」と変な声を上げてた。

それもまた、なんだか──
楽しくて、心がほどける昼休みだった。
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