• テキストサイズ

【ヒロアカ】re:Hero

第9章 名前に込めた想い


「漆黒ヒーロー、ツクヨミ」

「チャージズマ!!」

「え〜、私は“ピンキー”で♡」

教壇の前で、次々にヒーロー名が発表されていく。
個性の色が滲んだその名に、みんなの歓声がわく。

笑いが起きたり、「それいいじゃん!」なんて盛り上がったり。
この時間だけは、少しだけ将来を夢見てもいいような、そんな空気が漂っていた。

私は机の上で手を組んだまま、静かにその流れを見つめていた。

(……私も、そろそろ、言わなきゃ)

みんなに比べて、少しだけ発表が遅くなったのは、名前に迷っていたからじゃない。
ただ、言葉にするには、ほんの少しだけ勇気がいった。

だってそれは──
私の全部を背負う名前になるから。

「じゃあ次……星野想花」

呼ばれた瞬間、心臓がひとつ跳ねた。

ゆっくり立ち上がると、クラス中の視線が集まる。

(みんな、見てる)

深呼吸をひとつ。視線をまっすぐに前へ向けて──

『……“ウィルフォース”。そう名乗ります』

その言葉を置いた瞬間、一瞬だけ静まり返る教室。

「ウィルフォース……?」

「“意志の力”って意味、かな……?」

耳郎ちゃんがぽつりと呟き、緑谷くんが目を丸くして「かっこいい……!」と声を漏らした。

『私は、これから先……たとえどんなことがあっても。
自分の意志で、ちゃんと進んでいきたい。誰かの希望になれるような──そんなヒーローになりたいから』

ほんの少しだけ、声が震えていたかもしれない。

でも。
私はちゃんと、胸を張っていた。

「いいじゃん……!」
「“意志の力”かぁ……まさに想花って感じ」

「──フン、らしいな」

後ろの方から、勝己の声が小さく聞こえた。
その口元は、なんだか……ちょっとだけ笑ってた気がする。

私は席に戻って、椅子に腰を下ろす。

(……よかった)

心のどこかで、ずっと怖かった。

誰かにどう思われるかとか、変な名前だって笑われるんじゃないかとか。
でもいま、こうして笑い声に包まれながら、自分の名前を胸に抱けるこの時間が──

きっと、この先ずっと私を支えてくれる。

(ウィルフォース。……これが、もう一人の私だ)
/ 664ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp