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【ヒロアカ】re:Hero

第8章 優しい休日


夜風が肌に心地よくて、
カラオケの喧騒が遠のくほど、世界が静かだった。

私たちは並んで歩いていた。
駅までの道。言葉もなくて、それでも不思議と苦じゃない。

ちら、と爆豪くんの横顔を盗み見る。
街灯が差すその顔は、いつもより少し険しく見えた。

『ねえ、爆豪くん』

「……なんだよ」

『その……あたし、さ。前と雰囲気変わったでしょ?』

彼はしばらく黙ったまま、ポケットに手を突っ込みながら、ぽつりと。

「うるせぇ。てめぇはてめぇだろ」

『……でも、あたし、すこし自信なくて』

「……はぁ。ったく」

そこで、彼は立ち止まった。

「なあ。……お前さ、ほんと、気ぃつけろよ」

『え?』

「今日だって、ナンパされてたろ。ああいうの、これからもっと増えるに決まってんだろうが」

『…………』

「……見た目がどうでも、俺にとっちゃ変わらねぇ。でも世間はちげぇんだよ。
可愛くなった分、目立つし、狙われんだよ。……マジで、危なっかしくて見てらんねぇ」

それはまるで、
好きだって言ってるみたいだった。

でも爆豪くんはそんなこと、一言も言わずに、
ただ眉をしかめたまま、私を見ていた。

『……心配、してくれてるの?』

「は!?べ、別にそんなんじゃねぇし!!」

わかりやすく赤くなったその顔が、全部の答えだった。

『……ありがと、爆豪くん』

「……チッ、礼なんかいらねぇ」

そう言って歩き出す彼の隣に、私はそっと並んだ。

少しだけゆっくりな歩幅。
髪が風に揺れると、彼の手が一瞬だけ触れそうになって――でも、触れなかった。

でもわかる。
それくらい、私のことをちゃんと見てくれてるってこと。
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