第8章 優しい休日
――そして、部屋に戻った瞬間。
「ただいま〜〜〜!あのねっ、男子も来てたんだって!一緒にやろうよ〜!」
「合流しよ〜合流っ!ぎゅうぎゅうでも盛り上がったもん勝ちっしょ!」
三奈ちゃんの明るい声に、女子たちは一瞬「え〜!」と驚いたものの、
「え、全然OKなんだけど」
「男子も呼ぼう呼ぼう!」
「ほら、席詰めて詰めてぇ!」
すぐに空気は跳ねるように弾けて、笑い声が部屋中に広がった。
そのタイミングで、カラオケの扉がタイミングよく開く。
「いよっ!乗り込みまーす☆」
先頭を飾るのは、もちろんノリノリの上鳴くん。
その後ろから、切島くん、瀬呂くん、尾白くん、砂藤くん、峰田くん……
そして最後に、少しだけ間を空けて。
無言で、明らかに乗り気じゃなさそうな顔をした爆豪くんが、部屋に入ってきた。
『……あ』
(……なんで、来てるの)
賑やかでカラフルな空間。男女がぎゅうぎゅうに座って、もうどこがどこだかわからない。
でもその中心に、なんとなく――視線が集まっていた。
……爆豪くんと、私。
誰も声に出しては言わない。
けれど、さっきの女子会の話を知っている皆は、きっとそれぞれに気づいてる。
「本当に付き合ってるの?」って、聞きたいけど聞けない。
そんな微妙な空気が、部屋にうっすらと漂っていた。
……気づかないのは、ポテト片手にご機嫌な峰田くんくらい。
「いや〜♡ 女の子に囲まれるとか、神展開でしょ!?打ち上げ最高ぉぉぉ!!」
『……何この状況……』
小さく肩をすくめて笑ったその瞬間。
ふと視線を上げると、ちょうど――爆豪くんと目が合った。
彼は目をそらさなかった。
けれど、何かを言うわけでもなく、ただ、まっすぐに私を見ていた。
その視線が、胸の奥をすっとなぞっていく。
――やっぱり、今日の打ち上げ。
波乱の予感しかしない。