第7章 君に負けたくない
轟side
「……星野、それ……」
そう言いかけて、声が詰まった。
――チア衣装。
ポンポンをぎこちなく振るその姿。
目が、ふと合って。……少し頬が赤くなっていて。
たぶん、その一瞬で分かってしまった。
あぁ、可愛いって、こういうことか。
胸が軽く痛んだ。
正直、感情に疎い方だと思っていた。
でも、その姿を見た瞬間、何かがざわめいた。
(……これ、本人の意思じゃない)
視線の先で、爆豪が言葉にならないまま視線を逸らしたのが見えた。
飯田は混乱し、緑谷は固まっていた。
……そのときだった。
「……言ってない」
相澤先生の静かな声。
答え合わせは一瞬だった。
(やはり、だろうな)
――けれど。
あんな姿、もう二度と見れないかもしれないと思ったら。
ほんの少しだけ、残念だと感じてしまった。
(……自分の感情が、わからない)
ただ、ひとつだけ確かだった。
あの子が笑ってポンポンを振る姿。
心に、きちんと刻まれてしまったということ。