第2章 「ぬくもりと沈黙の距離」
外の天気は一向に回復せず、夜の雨はまだ止む気配を見せなかった。
「……終電、逃してもうた……」
センラがスマホを見つめながら、小さく呟いた。
「え、もう……そんな時間?」
「……うん。てか、このへん電車めっちゃ少ないんやな。土地勘なくて、完全に油断してた」
「……タクシーでも呼ぼうかな……」と彼が呟く。
「このへんの駅前、人通りも少ないし、タクシーも拾いにくいですよ」
「……そっか……」
「じゃあ、ネカフェとかに泊まろかな(笑)」
「ここらへんに24時間のネカフェとかないです」
その提案に、私はふと口をつぐんだ。そして気づく。
(なんで、引き留めたいって思ってるんだろう……)
「……あの、センラさんって、芸能人なんですよね?」
「……まぁ、一応」
「だったら、こんな夜中にウロウロしてるの、逆に危なくないですか?今日のことは誰にも言わないですし、安心して泊まっていってください」
そう言った自分の言葉に、私自身が一番驚いていた。 理由を考えると、胸が少しだけ苦しくなった。
センラは一瞬、何かを思案するように黙り、それからふっと笑う。
「……じゃあ、お言葉に甘えて……泊まらせてもらおかな」
その言葉に、私の心が小さく跳ねた。