第8章 褒美
「……ッ、う、ごめんなさ、い……。」
「血、出てるけど。……これ、手からか?」
「……、ッキバナ、さま……?」
「手というより、指か。」
キバナさまが掴んだ手をじろじろ見ている。
塞がっていない傷口から、ぽた、と血が垂れた。
「どこで切った。」
「さ、さっき…切りました。」
「なんだよ。卵で指切ったとか聞いたことねえけど。」
「た、多分、赤切れです。
前から、割れそうで、気をつけていたんです、けど」
「……。」
「ご、ごめんなさい…許してください、キバナさま…」
キバナさまが僕の指の1本1本に触れていく。
毎日玩具にローションつけて練習して、
部屋の掃除して、ベッドメイキングして、
またローションつけて練習して…。
何度もそれを繰り返していたら、
手がどんどん荒れてしまった。
皮も剥けて、ささくれもいくつかある。
「……ふん。」
キバナさまが僕の腕から手を離した。
強く握られた手首には、しっかり痕が残っている。
「き、ばな、さま……。」
「ハンバーグの皿、よこせ。」
「う、うぅ……。」
キバナさまが足でとんとんと床を叩いた。
これ以上逆らったら蹴るつもりだ。
僕がハンバーグのお皿をキバナさまに差し出すと、
僕のフォークで卵を割る。
「……ったく。」
今日は、もう、食事抜きだろうか……。
まだハンバーグは半分しか食べていない。
もっと食べたかったな…。
そう考えていると、
キバナさまがまた鎖を引いた。
「手、貸せよ。」
「は、い。」
おそるおそる手を差し出すと、
手のひらにティッシュが押し込まれた。
「とりあえずその血止めろ。
そんな手であちこち触られたら部屋が汚れる。」
キバナさまが顎でテーブルの柱を指した。
出血していたせいで、
僕の指の跡がくっきり残っている。
「あ、とで…拭きます……。」
「拭いた時にまた汚すだろ。」
血で血を洗うようなもんだ。と
キバナさまが呆れた顔をして、
僕の指の跡を拭った。
水拭きすればすぐ落ちるのに。