第8章 褒美
(レイ視点)
「ほら、夕飯だ。食えよ。」
キバナさまが用意してくれた机の上に、
料理が置かれる。
今日はハンバーグだ。
デミグラスソースがたっぷりかかっている。
「いただきます。」
キバナさまにぺこりと頭を下げると、
鼻で笑って食べ始めた。
キバナさまの夕食もハンバーグだ。
僕よりもずっと大きい。
「……ん。」
白いエプロンを首にかける。
ギプスを汚さないために毎回つけるようになった。
零さないように前かがみになりながら、
ハンバーグを口に含む。
「……んむむ、」
美味しい。もぐもぐと咀嚼していると、
キバナさまが僕を見下ろした。
「お前ハンバーグ好きだよな。」
「はい。」
「ケチャップとデミグラスどっちがいい?」
「迷います。
どっちも美味しいですが…。
ケチャップ、かもです。」
「ガキだな。」
キバナさまがゆで卵の皮を剥きながら言った。
ゆで卵はタンパク質が豊富だから、
たくさん食べないといけないらしい。
僕のお皿にも卵が乗っている。
「オレさまはステーキの方が好きだ。」
「……んん、ステーキも、美味しいです。
いつもお腹いっぱいになります。」
「だろ?結構いい肉使ってるからな。」
キバナさまが呟きながら
ゆで卵を口に含んだ。
僕もゆで卵を手に取る。
「…………いっ……」
手に取った瞬間、
ぴき、と嫌な音が鳴った。
「……っ」
手元を見ると、卵が赤く染まっている。
「……あ……。」
指を見ると、ぱっくり割れてしまっていた。
ぽたぽたとエプロンに血が染みた。
ど、……どうしよ、う……。