第6章 首輪
「よお。」
その時、がちゃり、とドアが空いて、
家主が入ってきた。
オレンジのバンダナは取ってしまっているが、
服はユニフォームのままだ。
「おかえり…なさいませ。」
「なんだそれ。メイドみてえだな。」
包帯だらけのメイド?変なヤツ。
けらけらと笑って、
僕に近付いてくる。
このまま抱くつもりなのだろうか。
しまった、準備しておくべきだったな。
「身体は平気か。」
「申し訳ございません。
少し時間をいただければ、
すぐに準備致します。
今日は、騎乗位でもなんでも…。」
「ちげえよ。怪我。大丈夫かって聞いてるんだ。」
「え…えっと…。」
間の抜けた声が出てしまう。
抱きたくて近寄ってきたわけではないらしい。
家主の目線が、ギプスに行く。
「薬飲んだか?腕痛むだろ。」
「さっき飲みました。」
「ならいいけど。」
家主の目が、ギプスから僕に移される。
「来いよ。飯にしようぜ。腹減った。」
「は、はい……。」
家主は、まだ僕を返す気には
なっていないらしい。
僕も流石にお腹がすいた。
食べ物にありつけるのは万々歳だ。
「好きなもんとか分かんねえけど。」
ダイニングに案内される。
流石ガラルのジムリーダーというか、なんというか。
他の地方のジムリーダーの生活とはスケールが違う。
スポンサーがついて、
ジムには何百人の観客席が埋まる。
しかも、この家主は、その中でも人気も高い。
いくらもらっているのだろうか。
僕の借金なんて、一瞬で消し飛んでしまいそうだ。
リビングも広ければ、ダイニングも広い。
僕の家の何倍もあるだろう。
「あーあ。肩いてぇ。」
家主ががた、と席に着く。
「失礼…します。」
どうしていいか分からず
とりあえずその場に膝をついた。
足を引きずって、お客様の足元に寄る。
床に座ったまま見上げると、家主と目が合った。
「すぐ床座って。犬だな、お前。」
「………。」
それに笑ってから、
家主が料理の皿を床に置いた。