第6章 首輪
(レイ視点)
「……………。」
横になったまま、
お客様が部屋を出ていくのを見送る。
僕は簡素な部屋に取り残された。
状況が目まぐるしく動きすぎて、
全く分からない。
家に帰って今日の稼ぎを全部取られたが、
目標金額には足らなかった。
いつも通りサンドバッグにされた後、
役立たずは殺すと脅された。
それで恐ろしくなって、
電話をかけて、
…水責めされて、
そのまま地下室に落とされた。
それで激痛で気を失って、
それで……
腕にはギプスがはめられている。
まだずきずきと痛むが、
地下室に1人でいた時よりはやわらいだ。
背中も、あまり痛くない。身体もだ。
「…………。」
あまりスプリングのきかない
ベッドに身体を沈める。
どうして僕は、ここにいるんだろう。
ここの家主のことを考える。
『なんかあったら連絡しろ』
その言葉に、甘えてしまった。
つらい、逃げたい、くるしい…
そんな気持ちから、携帯をつい使った。
ポケットにはまだ携帯が入っている。
他のお客様から何度か電話が入っているが、
今は出る気がしない。
そもそも、この部屋から出られないのだ。
客を取ることもできない。
棚を見ると、
ペットボトルの水と、痛み止めが
置かれている。
どちらも、ここの家主にもらったものだ。
『横になっとけ。』
「……………。」
家主が優しい人であることは
前から感じていた。
酷くされる時なんてほとんどない。
首輪を引っ張られる時は、
いつも僕が愛撫に失敗した時のみだ。
従順にしていれば、
家主は僕に何もしてこない。
それどころか、
『とっとけ。チップだ。』
だなんて、借金を抱えているのを知って、
いつも多めにお金を支払ってくれる。
今日だってそうだ。
ナックルシティジムのユニフォームを
着ていた家主は、仕事中だったのだと思う。
僕みたいな、お金のやり取りの関係の人に
そこまでするだろうか。