第5章 救う
なにされてるんだよ。
水はシンクいっぱいに張られていて、
床や壁一面に濡れていた。
かなりキツくやられてる。
「と、とにかく。
海に捨てられることはなく終わりました。
僕の考えすぎでした。」
「それなのに、お客様に電話をかけてしまって…
ご迷惑おかけし、申し訳ございません。」
少年はぺこりと頭をさげた。
迷惑、だとか申し訳ない、とか、
そんな言葉はいらない。聞いてない。
「前々から言ってただろ。
その客やめろって。」
「……………。」
「大体、なんでその固定客は
おまえの家知ってんだ?」
「………それ、は…。」
少年の目が泳ぐ。
オレさまの疑念か、確信に変わっていく。
飛び散った赤い跡、
金の抜かれた財布、
『役立たず』……。