第5章 救う
「おぶってやろうか?」
「歩けます…平気です。」
「タクシー呼ぶから、病院行くぞ。」
「………。」
少年が黙り、
テーブルの上に置いてある財布を漁る。
…札が1枚も入っていない。
「お金ないので…やめておきます。」
「昨日オレさまがやった金はどうした。」
「もう…使っちゃいました。」
「はあ?
おまえのために多めにやってただろ。」
「……申し訳ございません。」
「……。」
少年の目が泳いでいる。
なんか、コイツが怪我してる理由、
分かった気がする。
「オレが払ってやる。」
「…できません。」
「じゃあ、ツケにしとけ。」
「…………。後で、必ずお支払いします…。」
少年が腕を抑えたままふらふらと
家の外に歩いていく。
背中を支えてやると、
ありがとうございます、
と呟いた。