第5章 救う
「レイ!」
もう一度叫ぶが、やはり返事はない。
もしかして…遅かった、とかないよな。
「……ったく、面倒かけさせやがって……。」
廃墟とはいえビルなだけあって、
部屋数は無駄に多い。
かたっぱしから部屋のドアを開けるが、
どこにも少年の姿は無い。
「レイ、返事しろ。どこにいんだよ。」
オレさまに助けを求めてきたくせに、
そのまま野垂れ死にさせるわけにはいかない。
その時、床がぎし、と鳴った。
……なんだ、ここだけ床がへこむ……
「………あ、」
先程の食器棚の近くに、
床のちいさな取っ手が見える。
ぐっと引き上げると、
床が動いて、下が見えた。
「なんだよ。もっと分かりやすくしとけ。」
地下へのリフトだ。
災害に備えて昔作られた設備。
田舎のスパイクタウンだからこそ残っている場所だ。
「おい、いるのか?」
ゆっくりと梯子を降りていく。
1歩降りる度にぎしぎしと鳴って、
そのまま折れてしまいそうだ。
「ほこりっぽいとこだな。……ったく、
なんでこんな目に合わなきゃいけねぇんだ。」
床に足をつけて、壁を適当に触ると、
ぱち、と電気がつく。
「普段は使ってないのか?」
明るくなった周りを見渡すと、
元ボイラー室のようだ。
使っておらず埃をかぶったパイプの脇に
小さな洗濯機が置かれている。
その角に、丸まってる、影が見えた。