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キバナさん 男娼を買う

第5章 救う









 「なんだこの薄暗い所は……。」

 オリーヴが言っていた通り、
 スパイクタウンの裏通りは
 本当に治安が悪い場所だ。
 地面はペンキでそこらじゅうが塗られていて、
 空き缶が転がっている。

 「あぶね…、」

 足元をジグザグマの群れが走って通り抜けていく。
 スパイクタウンの連中ですら近づかなさそうな所だ。
 
 アイツの書類、PDFにしておいてよかった。
 住所をタウンマップに入力すると、
 この辺りだと表示される。

 「ネズの声も聞こえる…。」

 遠くの方でネズが叫んで、エール団が
 盛り上がっている声が聞こえる。

 今日はライブのようで、
 街中のスピーカーからネズの声が
 響き渡っている。

 「………ここか?」

 タウンマップが示す先には、
 二階建ての壊れかけたビルが建っていた。
 どうみても廃墟だ。人が住んでいるとは思えない。

 「今にも崩れそうなんだけど。
  ほんとにここで大丈夫かよ…。」

 住所を確認するが、やはりここだ。
 意を決して、ビルのドアに手をかける。

 「レイ……?」

 
 昔聞いた、少年の名前を呟く。
 このまま帰る訳にはいかない。
 
 壊れてんのか開いてんのか、
 わからないビルのドアを開けて中に入る。
 ……中は意外と綺麗だ。
 ちゃんと生活感がある。


 「邪魔するぜ。」

 一応、一声かけるが、返事は無い。
 食器棚には2人分の食器が入っている。
 しかし、その食器棚は、
 赤い跡で汚れている。

 「…………。」

 手の跡も残っている。
 床や壁に血が飛んでいて、
 5つの指の跡は、赤く濡れて、…。
 まだ、乾いていない。

 「…レイ。来てやったぞ。」

 呼んでみるが返答はない。
 それとも、ここじゃなかったか?

 シンクには水が張ってあり、
 床まで濡れてしまっていた。
 水がいたるところに飛んでいて、
 誰かが暴れ回ったみたいだ。

 椅子もひっくり返っていて、
 奥のベッドは……、…。
 見たくないが、恐らく血と…白い液体で汚れ、
 シーツはぐしゃぐしゃにされている。

 明らかに…誰かが、襲われた跡だ。




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