第5章 救う
「アイツの固定客の居場所なんて
分かんねぇし…。」
先程の電話では
客らしき男の声は聞こえなかった。
行為中に無理矢理
電話を掛けてきていたわけではなさそうだ。
だが、すごい雑音で、
周りの状況が何も分からなかった。
「……そうだ、雑音…。」
騒ぐ声と、誰かの叫び声。
擦り付けたような音……。
全てが同じタイミングで響いていて、
まるで、耳元で質の悪い音楽を
聞かされているようだった。
「………おん、がく?」
そうだ、音楽……
その言葉で、全てが繋がる。
そうだ、ヤツの家――スパイクタウンだ。
「急用が出来た。
誰か来たら、不在だって伝えてくれ。」
「わ、分かりました。」