第5章 救う
「もしもし?おい、明日空いてるか?」
『た、…』
「ん?」
『たすけ、て…くだ、さ…』
その言葉に、すっと血の気が引く。
少年の声はか細く、消えてしまいそうだ。
「大丈夫か、怪我は?」
『う……痛い…いたくて、ぅ……。』
思わず声が震えた。
普段の傷跡を考えれば、
過剰なプレイであることは想像できる。
そして、それが行き過ぎてしまっていたら…。
「…今から行く。場所教えろ。」
『う、ぅ……。』
少年は呻いたまま、答えない。
後ろの雑音も酷い。
ぎゃーぎゃーと騒ぎ立てる声と、
誰かの叫び声が聞こえる。
「おい…!、どこだか答えろって言ってるんだ。」
『………、……。』
オレさまが叫ぶが、返事は無い。
周りのジムトレーナーが心配そうに見ている。
「キバナさん……?」
「わりぃ…プライベートだ。」
ジムトレーナーを手で追い払って
またスマホに耳を当てる。
『あ……、……。』
「うるさくて聞こえねえ…
なんなんだよこの雑音は…。」
さっきよりも騒ぐ声が大きくなり、
何かを擦り付けたような、ががが、という音が
スマホから聞こえてくる。
少年は何かを話してくれているようだが、
一切聞こえない。
『…………き、た……。』
「おい、何が来たんだ。聞いてんのか?」
『さ………。』
少年のか細い声を最後に、
ぶつり、と電話が切られる。
「おい!」
オレさまの声は、届かずに控え室に木霊した。
思考を回転させる。どうしたらいい?
「………チッ、」
もう一度かけ直してみたが、繋がらない。
クソ…せめて、場所さえ分かれば…。