第5章 救う
「雨パにするなら、技構成を変えて…」
戦ってみた感想とアドバイスを言うと、
ジムトレーナーが真剣に聞いている。
数ヶ月後にはジムチャレンジがある。
勿論ジムリーダーの資格を更新したオレさまだが、
ジムチャレンジではオレさまの他に、
ジムトレーナーの能力も試される。
もともとエリート気質のある
ナックルシティジムのジムトレーナーは、
吸収も早く、成長も早い。
マクワんとこみたいに、がっちがちに
厳しくしなくても、
勝手に練習して勝手に強くなるやつばっかだ。
ま、オレが育てるの
上手いだけかもしれないな。
「分かりました。ありがとうございます。」
「おう。がんばれよ。」
ひらひらと手を振ると、ジムトレーナーが
ぺこりと頭を下げた。
その姿が、少年の姿と重なる。
スマホを開くが、着信履歴はない。
まあ…昨日の今日だし、流石にないか。
ふわぁ、と欠伸が漏れた。
昨日は深夜まで呑んでしまって寝不足だ。
「……こんなふうに急に時間空けて、
他の客が離れねえのも不思議だよな。」
新規より固定の方が多い、と本人は言っていたが、
実際は何人くらい固定客がいるのだろうか。
自分より金払いの良い客も、いるのかもしれない。
その時、着信履歴の順番が変わり、
ぶるぶる、とスマホが震え始めた。
「………は?」
画面を見ると、今考えてた、
少年の名前が表示されている。
「なんだよ。宿泊って1日だったのか?」
なんだ。1泊かよ。心配して損した。
次はいつ相手してもらおうか。
今日は女との予定いれたし、
明日か明後日か……。