• テキストサイズ

キバナさん 男娼を買う

第10章 露見











 「キバナさま。」

 「だから、」

 「き、キバナ…さん。」

 僕が言い直すと、
 キバナさんは納得したように頷いた。

 「『さま』はもう終わりだ。いいな?」

 「…はい。」

 寝室でベッドに2人で座る。
 つきのひかりが、キバナさんを
 照らしている。

 「やっぱ首輪もいらないな。」

 キバナさんが緩くなった包帯を直す。
 シャワーを浴びてから自分で巻き直したのだが、
 上手くいかなかったみたいだ。

 「傷作ってたって早く言えよ。
  ダンテに詰められただろうが。」

 「…………。」
 
 あの首輪は、革の素材でかなり重かった。
 ないと肩が軽くなるのだが、
 今はその軽さに不安を感じる。
 首輪を失った僕は、
 ここにいていいのだろうか。

 「……………くびわ……。」

 リビングの棚の上には、
 僕の首輪が置かれたままだ。
 もしキバナさんが許してくれるなら、
 今すぐ取ってきて、首につけたい。

 「そんなに大事か?」

 「……はい。」

 キバナさんは
 僕の首をずっと撫でている。
 するすると指が行き交いして、
 傷がぴりぴり痛む。
 でも、それが気に入っていた。
 キバナさんに飼われている。
 その事実が欲しかった。

 「…どうしても付けたいか。」

 「はい。」


 「…………はぁ。」

 キバナさんが諦めたように
 包帯から手を離す。

 「わかった。
  明日、仕事から帰ったら出かけるぞ。」

 「遅く、なりますか?
  用意してお待ちしております。」

 「バカ。おまえも行くんだよ。
  新しいやつ選びにな。」
 
 昨日、キバナさんにいろいろ指示された。

 キバナ『さん』と呼ぶこと、
 リードと首輪を外すこと。
 床に座らないこと。
 マットレスに寝ないこと。

 そして、たまに外に出ること。

 「……………。」

 「大丈夫だって。オレさまがいる。」

 キバナさんの家に来てから半年、
 外に1歩も出ていない。
 …不安だ。
 明日から、首輪も、マットレスもない。

 「………ぅ……。」

 涙がまた頬を伝う。
 今日、家にいることが見つかって、
 マクワって人にぺらぺらと話してしまった。
 だから…こんなことになってるんだ。
 僕のせいで、僕の、



/ 164ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp