第10章 露見
「バカ。泣くな。」
「ぅ…ぐすっ…。」
涙をごしごしと拭くが、止まらない。
ああもう、とキバナさんがベッドから降りた。
「今日はお前に振り回されてばっかだ。」
キバナさんが散らかったままのテーブルを触る。
ダンテって人が引き出しのものを全部出したせいだ。
テーブルにはいろんな物が溢れている。
換えのシーツ、タオル、キバナさんのバンダナ、
僕の着替え………。
「…ごめんなさい。
僕が、僕が見つかったから…。」
「まあ、いずれバレてた。お前のせいじゃない。
ダンテが家に来た時点で、
無理だって思ってたし。」
八重歯をがちがちと鳴らしながら
けっと悪態をついている。
ダンテという人は、かなりやり手みたいだ。
マクワという人も。
ガラルのジムリーダーの選考はかなり厳しいと聞く。
それを掻い潜るんだから、
並大抵の人間では無いのかもしれない。
「そんなに…すごい人達、なんですか?」
「まあな。
ダンテは人のことすぐ見抜くし、
マクワも口が上手い。
アイツが変なファンに物怖じしないのは、
立ち回りが上手いからだ。」
「………。」
「お前も上手い具合にやり込められただろ。」
「…はい。」
「アイツらには嘘ついても無駄だ。
それに…悪い奴等じゃねえ。」
キバナさんがテーブルから戻ってくる。
黒い布をくるくる回している。
キバナさんが言うなら、そうなのかな。
「なにかあったら、絶対手を貸してくれる。
信用していい。」
「……。」
キバナさんの手が、首に回る。
するする、と何かが巻かれた。
「で、これをするとアイツらに怒られるわけだが。」
首に何かが巻きついている。
かちゃり、と何かが引っかかった。
「お前がつけたいなら、仕方ねぇな。」
ベッドから窓を見ると、
自分の姿が反射されて映る。
僕の首に、チョーカーが巻かれていた。
外出用の、レースのチョーカーだ。
「………くびわ…。」
首に触れると、
包帯の上に布が巻かれている。
僕が、キバナさんのモノである、証。