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キバナさん 男娼を買う

第10章 露見









 怒りで頭に血が上っていく。
 ボイラー室で、レイを
 抱えた時のことは忘れられない。
 
 身体はボロボロで、財布から金盗まれて。
 なにもかもなくなったアイツは、
 弱ってて、意識も朦朧としてて。
 手の中で、そのまま冷たくなってしまいそうで…。
 
 
 「アイツ、死んだ目で客取るんだ。
 身体は動くのに、目は死んでる。
 知らねえだろ…。」

 口淫する時、
 アイツはいつも迷いなく
 知らない男のを口に含む。
 身体だって、好きに売る。
 なんにも考えてないし、考えようとしてない。
 ただただ、情事が終わるのを
 待っているだけの、人形だった。
 
 「やっと最近、
  腕も治って、傷も見えなくなって。
  少しずつ過去を忘れようとしてる。」
  
 
  「確かにオレのやり方は
  間違ってたかもしれない。
  でも、どうすりゃいいんだよ。
  父親は最低だし、借金まみれで、
  頼れる大人はいない…
  どこにも行く宛がない…。」

 「……………。」


 ダンテがオレの言葉を聞いて黙る。

 くそ、どうすれば、
 どうすればアイツを救えるんだ。
 どうしたら幸せになれるんだ。
 
 飯も、生活も与えてきた。
 ちゃんとオレさまなりに
 大切にしてきたつもりだ。

 なのにレイは…
 まだ昔を思い出してる。
 父親を呼んだり、
 他の男に抱かれてたことを考えたり…

 ルールを教えても、
 オレさまで汚しても…

 オレはまだ、レイを救えていない。
 
 

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