第10章 露見
何も言い返す言葉がない。
確かに、オレさまはレイに
自分が全てであると教えた。
絶対に逆らわせなかったし、
外での関わりを禁止した。
助けた恩からか、レイはすぐに
オレさましか見なくなった。
女を手懐けるよりも遥かに楽だった。
「キミは彼の全てを奪っている…。
物扱いだ。」
最初は物だった。
女に満足出来ない時の性欲処理だった。
子どもだから、
その辺の女性に比べると、食費も安く済む。
しかも、奴は従順で、素直だ。
便利だなって…思ってた。
「違う…。」
…奪っていない。
相応な対価をもらっていただけだ。
レイの身体をもらう代わりに、
ベッドも、食事も。
全部ちゃんとやってた。
「違うと言われても、納得いかないな。」
「…アイツは、オレさまのものだ。」
「キミのモノ…?
いつからそうなったんだ。」
「うちに来た時からだ。
首輪つけてんだろ。オレさまのだって証だ。
…だから、殴ってでも返してもらうぜ。」
「おかしいな。
いつもだったら『もういらない』って
簡単に逃がすじゃないか。」
「奴は逃がすつもりはない。
さっさと返せ。そこどけよ。」
「何故だ。
彼は性欲処理の道具なんじゃないのか?」
「…………。」
その言葉に、口が開いて、
声にならない息が漏れて、消えていく。
ちがう、と言いたいが、言葉が出ない。
性欲処理は…させてる。
でも、道具ではない。
お互いに…良くなってた、はずだ。
行為も、生活も。
「会ったばっかのお前に、
オレさま達の関係に
口を出してもらっちゃ困るな。」
そんな簡単なものじゃないんだ、と言うと、
ダンテが呆れた。