第10章 露見
「チッ…あいつ…どこいきやがった!」
家の中のどこを探しても、レイがいない。
家は荒らされてるし、掃除道具は
置きっぱなしだ。
どうなってんだ…本当に。
「逃げたか?いや…。」
その思考をぶんぶんと消す。
ヤツが何も言わず逃げるとは考えられない。
なにか理由があるはずだ。
「まさか親か?
バレてないはずだ。音沙汰ないし…。」
病院には連れていったが、
一応エンジンシティに通っていた。
人通りの多い街だし、スパイクタウンから遠い。
その人混みに、
レイを変な目で見る男はいなかったはず。
いたかもしれないが、
相手がオレさまだと知って、
大体の相手は引くだろう。
もし反抗してくる奴がいたら…許さない。
ジュラルドンにダイスチル打たせてでも止める。
「くそ、なんか手がかりは…。」
部屋の中を歩き回るが、
何も思いつかない。
寝室も、リビングも荒れているだけで、
盗まれた形跡は無い。
ということは女か?
…めんどくさい奴が来て、
レイを攫った…?
そんな回りくどいことするだろうか。
それならオレさまに直接会いに来た方が早い。
それに、いくらレイでも
女性の1人や2人組み敷ける。
大人の男は無理だが女くらいなら。
「………ん?」
思考を回転させていると、寝室が目に入る。
床に、靴下が落ちている。
「……これ。」
だいぶ前に、レイに押し付けたグッズだ。
ドラゴンは履き潰すくせに
他の靴下には見向きもしなかった。
だからこれも、ほとんど履いてなくて……。
「いわ…タイプ………。」
いわタイプ…キルクスタウン…マクワ?
マクワがここに来て、レイをさらった?
なんのために?
でも、ほかに手がかりはない。
靴下が本当にわざと
置かれたものかどうかも微妙なところだ。
こんなことなら
ちゃんと携帯を持たせておけばよかった。
「行くしかねえな……。」
いわタイプの靴下をベッドに投げ捨てて
寝室を出る。
勝手に出ていきやがって。
そう簡単には逃がさねえぞ、レイ…。