第10章 露見
「もう少しキミの事を教えて貰ったら帰るさ。」
「……………。」
紫の髪の男性が、僕に詰め寄った。
諦めるしかないのだろうか。
「ぼくは、話した方が賢明だと思いますよ。」
「ああ。答えてくれたらすぐに終わる。」
金髪の男性がサングラスをかけ直して言う。
答えて…、帰ってくれるなら…。
「レイ。キミはどこから来たんだ?」
「す…スパイクタウン…。」
「歳は?」
「12…です…。」
男性の質問に答えていく。
こんなこと知られたら…
キバナ…さま、キバナさま…。
「マリィと同じくらいだ。
ネズなら何か知ってるだろうか。」
「流石に住民一人ひとりの顔は覚えてないでしょう。
ぼくもキルクスタウンの住人全員
知ってるわけじゃありませんし。」
「じゃあ、キバナ以外で、
キミのことを知っている人は?」
「う……う、いません……。」
「家族はいないのか?
連絡するから、
迎えに来てもらおうか。」
「え…か、かぞ……く…。」
「電話番号分かるか?住所でもいい。」
「いや…いやです…。」
自分の上に跨る父親が頭をよぎる。
拳を振り上げられ、身体中全て好き勝手される。
無理矢理抱かれて腰には激痛が走るし、
泣いてもやめてくれない。
「…帰りたく、ない…。」
会いたくない。顔も、見たくない。
こわい、こわい…
「僕には、ここしか、ないんです。」
「ここしかない?
じゃあ、ここに住んでいるんだな。」
「はい……。」
「あのマットレスもあなたのですか。」
「は、い……僕のです。」
「床で寝ているのか。
やはり放ってはおけない。」
「ち、ちが……」
「キバナさんに話を聞かなければなりませんが、
その前にこの子をなんとかしなければ。」
「…お、お願いです。
このまま見逃してくださ、」
俺が言葉を紡ぐと、男性が時計を見て立ち上がった。