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キバナさん 男娼を買う

第9章 リード








 来たばかりの時は、
 物置に住むんだと思っていたのに、
 今やキバナさまと同じ場所を使っている。
 考えられない。

 「髪も体も、な。」

 「……ん…。」

 キバナさまが僕の頬を撫でてくれた。
 膝に擦り寄ると、キバナさまが笑う。

 「おまえも気に入っただろ?」

 「はい。」

 キバナさまが気に入るなら、なんでも。
 そう答えると、する、と頬から下に手が伸びる。
 キバナさまの手に鎖が触れて、
 じゃらじゃらと鳴った。

 「立て。」

 キバナさまにぐっと鎖を上に引かれて、
 僕はその場で立ち上がる。
 …なにか、気に触るようなことを
 してしまっただろうか。

 「じっとしてろ。」

 キバナさまの手が、
 鎖から首輪まで伝う。

 
 「………?」

 「だから。動くな、バカ。」

 キバナさまの方を向こうとすると、
 首輪が動いたらしい。
 動かないようにそのままじっとしていると、
 手が離された。
 じゃらり、と鎖が床に落ちる。

 「今日からこっちな。」

 首元に、紐がついている。
 短いリードだ。
 紐の先に輪っかがついていて、
 引っ張れるようになっている。

 「鎖、見栄えいいけど邪魔なんだよ。
  一々じゃらじゃらうるせえし、飽きたし。」

 でも、リードは僕の首に垂れ下がっているだけで、
 どこにも繋ぐところがない。
 僕を繋げているものは、何も無い。

 「あと、お前逃げないからな。」

 「逃げません。」

 「知ってるって。今言っただろ。」

 逃げようなんて、1度も思ったことない。
 助けてもらった恩も、今もらってる生活も、
 全部全部、キバナさまのおかげなのだ。

 「部屋の中なら自由に歩き回って
  いい事にしてやる。」

 「え…?お留守番の時もですか?」

 「ああ。」

 「寝る時も?」

 「そうだな。」

 「…………。」

 どういう事なんだ。
 僕から鎖を取るだなんて。
 僕が目を丸くしていると、
 キバナさまが呆れている。


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