第9章 リード
「ふん。」
僕が目を白黒させていると
キバナさまがローションを手に垂らした。
僕がいつもやるみたいに
たっぷり付ける。
「ちゃんと付けねぇと痛いんだろ?」
「僕の、その、きた、きたないです。
自分で、やりますから…」
「うるせぇ。」
キバナさまは僕を一蹴して、
指にローションを馴染ませた。
やる気、なのか?いや、そんな…
「だめです。本当に。
やめた方がいいです。
汚いんです…。誰も、触ろうとしないんですよ?」
「うるせぇっつってんだろ。」
「ぃ…っ、」
キバナさまの指が蕾をなぞる。
うそ、うそ、ほんとに…?
腰が後ろに引いていく。
「だって、僕は…ぼくは、」
元、男娼、です…
「言うこと聞けないのか。」
その言葉に身体が強ばる。
だんしょう、と言おうとした口を閉じた。
逆らえない。逆らってはいけない。
僕の動きが止まったのをよしとしたのか、
キバナさまの指の動きが再開される。
つるつると撫でていた指が、
ゆっくり、蕾に、侵入してきた。
「んん…ッ。」
異物感に身体が強ばる。
人の指を感じたのは、何年ぶりだろうか。
「だめ…、です……。」
雄に貫かれるのはある程度慣れているが、
他人の指の経験は少ない。
いつも自分で解す時と感覚が違う。
肉の中を指が蠢いている。
ふぅ、ふぅ、と息を吐いて
指の動きに耐える。
ぬるぬると指が肉洞の壁を押し込んだ。
「ぃ…いやっ…。」
「なんだ。慣れてねぇのか?」
女はみんな善がるぞ。
そう言いながらキバナさまが
くちゃくちゃと出し入れしていく。
さっきより、指が増えた気が…
「2本目だ。とろけてきた。」
だって、とろとろにしないと
お客さんリピートしてくれないし…。
……。だめだ。指を挿れられると
男娼の記憶が頭にちらつく。
「ぅ、……。」
「何考えてんだ。
人がせっかく触ってやってんのに。」
キバナさまが不満そうに呟く。
これは自分のせいだ。
客を相手する、数分前。
シャワールームで
1人で準備して…これから客を相手しなければ
いけないことに絶望して、感情がなくなっていく。
これを毎日何回も繰り返さなければならなくて