第9章 リード
「大変ね。親戚の子の面倒を
見なきゃいけないなんて。」
「親が忙しいから仕方ないだろ。」
「そうなの?私でよければ、いつでも手を貸すわよ?」
「大丈夫だ。コイツ、手かからないから。」
「…………。」
僕はキバナさま以外の人と話すのは許されていない。
ずっと口を閉じて、なるべく無表情で
黙っているだけ。
そうすれば、キバナさまが人見知りだからと
適当に理由をつけて、やり過ごしてくれる。
看護師の目が、僕の身体に泳いでいる。
「そろそろ昼飯だ。
帰らないとコイツの親にどやされる。」
「ごめんね邪魔しちゃって。またね。
次は仲良く話せるかしら。」
「はは。どうだろうな。」
看護師が僕に対して手を振る。
また後ろに下がると、キバナさまが
愛想良くしろよ。と、
僕の頭をわざとこつく。
「キバナさんも。次のバトル応援してるから!」
「おう。頼むぜ。」
キバナさまが笑って軽く手を振ると、
僕を連れて病院を出ていく。
キバナさまを見上げると、
頭をくしゃくしゃと撫でてもらえた。
「いい子だ。」