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ラストラインを越えて

第17章 前哨戦


有馬記念の2週間前。特別登録をしたウマ娘たちの名前が公開された。
『あれ……思ったより少ない』
トレーニングも終わり、あとは帰るだけの20時頃。トレーナー室でURAのホームページを見ながらホマレが神座に言う。
「ええ、あなたよりも上は10名ほど回避したようです。12番目に来たので、繰り上がりで出走できる可能性が出てきました」
『でもさ、このまま辞退する人がいなかったらやっぱ出られないんでしょ?そう都合よくいくかな』
出走するにはあと2人退かなければいけない。
ホマレは言いながら不安げに耳を絞った。
「たしかに今の候補者全員が出バ投票を済ませたらあなたは補欠のままですね。出走者が確定するのは10日後なので、それまでに減らなければそこまでです」
『うわ~……焦らされてるみたいでヤダな。早くどっちか決まればいいのに』
ここ2ヶ月の間、出られると決まったわけではないレースのためにずっと鍛えている。
完全に諦めて次の明確な目標に集中できた方が精神的には楽だ。
ホマレはモチベーションの維持に若干苦労していた。
「僕の方でも他の候補者の動向に目を配ります。辞退の情報が入れば早めに出られるか把握できる。進展があり次第あなたに知らせるので、気を抜かずに待っていてください」
『わかった。よろしくね』
薄く溜め息を吐いて、ホマレは端末から視線を外した。
近くに置いていたコートとマフラーを身に付け、鞄を掴む。
『じゃー、もう帰るね。お疲れ様で~す』
「はい。お疲れ様」
カラカラと引き戸を開け、冷たい廊下に出た。
静かな通路を歩いて出口へ向かう。
一人分の控えめな靴音が響くのを聴きながら、ホマレは階段を降りていった。









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