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ラストラインを越えて

第17章 前哨戦


12月初めの放課後。
体育館内には各々のトレーニングに励むウマ娘たちの声が飛び交っている。
ウォーミングアップを終えたキトウホマレに、神座が端末を見せた。
「ファン投票の結果が出てます」
『えっ、私どこ?何位!?』
少し慌てた様子で端末を受け取り、画面を食い入るように見る。
上から順に目を通し、スクロールしていく。
『22位……!』
ホマレの実力を考えると快挙とも言える順位だったが、目標の10位圏内にはあまりにも遠かった。
『トレーナー、次の目標レースどうしよっか』
「勝手に終わらせないでください。まだ出られないことが確定したわけではありません」
神座が投票結果の上の方を指差す。
「上位の名前を見る限り、短距離やマイルを主戦にしているウマ娘もいくらかいます。それに中長距離がメインだったとしてもローテの兼ね合いや不調などで出走を見送る者も出てくるでしょう。10位内の全員が出走するわけじゃないので、あなたにもまだ可能性はあります」
『22位なのに……?』
「回避する者が多ければそれだけ繰り上がるので、今のところ出られる可能性は低いですが特別登録はしておきましょう」
『……うん』
ホマレは小さく頷いた。
登録さえしておけば候補者として名前が残る。
出走が叶わなかった場合、手続きは無駄になるがリスクは特にない。
登録しない手はないだろう。
『でも有馬だし、やっぱ皆出たがるよね?』
神座の考えに異存はなかったが、狭き門に期待しすぎるのもイヤだった。
半ば諦めているホマレに神座が返す。
「どうであれ出バ投票まで粘るべきです。登録後に辞退する陣営もあるかもしれません」
『了解。……出られるか分からないのソワソワするね』
「運に任せましょう。あなたに出来るのはもう体作りだけですから、焦っても仕方のないことです」
ホマレより上位の12人以上が回避しなければ有馬記念への出走は叶わない。
ファン数も以前より増えたとはいえ、別枠の6人に滑り込めるほどではなかった。
ほぼ確実に出られるわけでも、完全に諦めるしかない順位でもないのが余計にもどかしい。
『まあ、そうだね。トレーニングに専念すれば気も紛れるかも』
自分に言い聞かせるように呟きながら、ホマレは眉を下げた。









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