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ラストラインを越えて

第17章 前哨戦


『(このまま!ゴールまで全力で走れ!!)』
ラチ沿いで土を撒き散らしながら這い上がってくる栗毛の影に、スタンドがどよめいた。
先ほどまで最後方にいたウマ娘がいつの間に先頭を捉える位置にまで来ている、と。
『(何とか前の方には来れたけど……外からのウマ娘が速い! 最後まで交わされずに走れるか!?)』
外から差し迫ってくる足音に追い立てられながら、ホマレは一心不乱に直線の上り坂を駆け上がっていく。
先行にいたウマ娘たちはスタミナが切れてきているようで脚色が衰えつつあった。
残り300メートル。スタンド前の坂が終わり、平坦な直線がゴール板までずっと続いている。
『(直線長すぎ!脚が重い!でもここから更に加速しなきゃ1着は取れない……!)』
バテる先行勢を交わしながらホマレは最後まで脚を使おうと粘った。
『(目の前に2人……追い抜きたい!もっと速く走らなきゃ!)』
息を切らしながら先を走る背中に追いすがる。
脚の回転はもつれそうなほど激しく、獣のような勢いで駆けていた。
『(きつい……あと少し、あと少しで追いつけるのに……!)』
ホマレの速度は上がっているけれど、目の前の2人も同じく加速している。
必死に食らいついていくも、ふいに視界の右後ろから黒い影がとてつもない勢いで追い上げてきた。
『……!?』
ゆるいツインテールのウマ娘が力強い足取りでホマレを交わし、その先の2人もあっさりと抜き去っていった。
間髪容れず、スタンドから大歓声が上がる。
『(すご……!)』
ホマレも最後まで全力でゴール板を駆け抜け、やがて減速していった。
4着。掲示板には載る。
『(どうせなら1着取りたかったけど……あの子に勝てた気がしないな)』
青いリボンを揺らしながら、1着になったウマ娘がスタンドの観客たちに手を振っている。
頑張ったけど、どうにも及ばなかった。
『(……神座トレーナー、見てくれてたかな?)』
今日の走りは着順こそ奮わなかったが、目的は最低限達したはずだ。
ホマレも観客席を眺めながら進むが、如何せん人混みが多くて分からなかった。









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