第15章 ファン投票
「そうですね……やはりレースとライブで魅せるのが一番効果的でしょう」
いつもとやることは変わらなさそうだ。
ホマレは少し安堵しながら頷いた。
「2500m芝の重賞レースが11月の前半にあるので、それに出ます。距離もバ場も有馬と同じなので、そこで好走できれば観客からの期待値も高まり票の獲得に繋がる、という流れです」
『たしかに目立ちそうかも』
投票期間中に活躍すればその分注目され、投票数が伸びる傾向が強い。
神座の説明に納得しながら相槌を打つ。
11月に行われる有馬記念と同じ距離とバ場のレース――アルゼンチン共和国杯は絶好の機会に思えた。
「あとは、ファン投票の期間に合わせて学園もチャリティーや広報活動などのイベントを催しアピールの場を増やしてくるのでそれにも積極的に参加しましょう。地道な増やし方にはなってしまいますが、何もしないよりはいいはずです」
神座が端末を操作し、スケジュールの確認をしている。
何だか12月まで忙しくなりそうだ。ホマレは別のやり方で負担を減らせないかと口を開く。
『カレンチャンとかみたいにSNSを活用するのは……?』
ウマッターやウマスタグラムなど、大衆にアピールする場として使えるはずだ。
ホマレは特に何も投稿出来てない自身のアカウントを稼働させるかどうか迷いながら提案してみた。
「実名かつ独自の広報ですか……。上手くいけば爆発的な知名度を得られる可能性はありますが、一歩間違えると取り返しのつかないバッシングを受けることもあり得ます。その危険性を考えると、あなたは手を出さない方がいいかと」
『炎上ってやつ?』
「ええ。そもそも猶予が短いので策としてはかなり望み薄です。SNSに気を取られるくらいなら、トレーニングに時間を使った方がよほど有意義でしょう」
そう言ったところで、神座がホマレに向き直った。
「……で、有馬記念を狙いますか?」
やるかやらないか早めに決めたいらしい。
静かに見据えられたまま、口を噤む。
『…………』