第13章 転向
ホマレは焦りを滲ませつつ、芝を捩じ伏せるように坂を駆け上がる。
芝の反発のせいで、地面への衝撃がそのまま脚に返ってきている。
その弾力が加速を支えていると同時に、一気に消耗に向かっているのを感じた。
少しずつ踏み込みが浅くなり、推進力が削られていく。
『(重い……脚が思うように前に出ない……!)』
スパートのピークで想像以上の負荷が来た。
息を切らしながら諦めずに脚を回すものの、目の前のウマ娘に迫れるほどの余力がない。
肺や気管支が焼けるように熱い。心臓もはち切れそうだ。
『(もう少し、あと少し前に……!)』
目の前のウマ娘にもかなり疲れが見えていた。
食らいつく勢いで芝を踏み続ける。
最後の一歩で、前を行くウマ娘の尻尾が視界の端を掠めた。
ゴール板を過ぎた瞬間、全身から力が抜けていく。
『……追い抜けなかった』
減速しながら思わず呟く。目の前には変わらず2人のウマ娘がいる。
直線があと100mでも長ければ1人は抜かせただろうに。
中山の短さに悔しさを覚えた。
『(……でも掲示板には載れたし!さすがに3位なら転向は無しにはならないよね?)』
西日で実力を出しきれた者が少なかったとはいえ、好走であることには変わりない。
ホマレは結果に安堵しながら退場口へ向かう。
砂では味わえなかった「反発」と「軽さ」。芝の感触が、心地よく足裏に残っていた。