第12章 夏合宿
『2人のチームのトレーナーはどんな感じ?』
「別に~?優しいってか叱れない気弱。ただ、狙ってる子は何人かいるみたい」
「私のトレーナーは年配の女性で……よく労ってくれるから頑張り甲斐がある人よ」
アルターもギンガもそれなりの距離感らしい。
『そうなんだ、いいねぇ』
優しくされたいし労いの言葉もほしい。
神座は不要な言動は極力しないから、2人の話がほんの少し羨ましく思えた。
「5分経ちました。練習を再開しましょう。3人とも、さっきと同じ位置につきなさい」
神座が休憩の終わりを告げに来た。
ホマレとギンガウェーブとアルターアワーはぞろぞろと移動する。
その途中、ホマレはちらりと振り返って神座を見た。
もうシルエットしか分からないほど離れているけれど、それでも目が合ったという自覚がある。
少なくとも完全な無関心ではないはずだ。
『(頑張って良い結果でも出せたら、いつかは嬉しそうにしてくれるのかなぁ……)』
普通のウマ娘とトレーナーのようなやり取りに思いを馳せ、ホマレはまた前に向き直る。
砂に刻まれた無数の足跡を辿りながら、3人でスタート地点まで戻っていった。