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ラストラインを越えて

第12章 夏合宿


『トレーナー、お待たせ~!』
砂を蹴散らしながら辿り着く。
サンダルと足裏の隙間がすっかり砂まみれになってしまった。
『トレーナー、今日もスーツなんだ。暑くないんですか?』
ジャケットとネクタイは外しているものの、ワイシャツとスラックスはいつものままだ。
神座は汗ひとつない涼しげな顔で頷いて返す。
「体温調節はしています。問題ありません」
『ふーん……?』
納得できずに首を傾げるも、本当に無理をしているようには見えなかった。
「長時間の移動で疲れているでしょうし、今日は慣らしで軽めのランニングをメインにしましょう」
『はーい』
返事をしてすぐ、ホマレは自身のスクール水着姿を見せながらソワソワと神座に提案した。
『走るのもいいけど……せっかくの海だしさ、初日だし……ちょっと泳ぎません?』
波打ち際を楽しそうに走っている数人のウマ娘が背後を通りすぎ、そのままふざけて海に入っていく。
波を蹴る足音と軽やかな笑い声の方に、自然とホマレの耳が向いた。
「わかりました。では向こうの近くの岩までクロールで往復するトレーニングも組みましょうか。肺活量と持久力、肩周りと足腰の増強が見込めます。離岸流がないか確認が取れるまでは浜辺で鍛えましょう」
『えっ、それとは別で、もっとこう……一緒に浅瀬でバシャバシャする遊……トレーニングがいいな?』
後ろからまだ聴こえている楽しげな声に釣られて、ホマレの足先が砂地を掻くようにモジモジと動いた。
神座も暑そうな格好をしているし、楽しく涼めたらと口ごもりながら食い下がる。
「駄目です。ただの水遊びでは体力ばかり無駄に消費します。トレーニングである以上、効果的に鍛えなければ意味がありません」
『う……はぁい。』
神座に促されるままに準備運動を済ませ、しばらくランニングをして過ごすことになった。
「ただ漠然と走るのではなく、どの部位に負荷が掛かっているのか自覚しながら取り組むように。筋肉や体幹を意識することで練習の質が上がり、より良い結果に繋がります」
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