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ラストラインを越えて

第10章 観戦


『(下の声すごい! レースの迫力が増してる……!)』
数万人分の声が合わさって、芝のスタンド席からは地鳴りのような凄まじい音が響いていた。
18人は土煙を巻き上げながら、第4コーナーから最後の直線へ。
早めに仕掛けた13番のウマ娘がバ群から飛び出していく。外からエイシンフラッシュも追い上げてくるのが見えた。
『(行け……!抜け出せ……!)』
しかし他のウマ娘たちも続々とスパートを掛けていく。
13番が急坂の短い直線を爆発的な末脚で駆け抜ける。ゴール板のすぐ手前に来る頃には後続から2バ進も離していた。
そのままゴールを通過した瞬間、鼓膜を突き破るような大歓声が全身を震わせる。
会場が熱狂に包まれる中、走り終えたウマ娘たちが減速していった。
『うわぁ……』
いつの間にか前のめりになって見ていたホマレが緩やかに体勢を戻しながら神座の方に目を向けた。
優勝したウマ娘を目で追っている。その横顔はいつもと変わらぬ無表情だったものの、少しつまらなそうに見えた。
『………?』
気のせいだろうか。ホマレは神座の意識をこちらに向けようと声を掛ける。
『1着、トレーナーの予想当たりましたねっ!』
「そうですね。……どうでしたか、GⅠの走りは?」
徐ろに振り向きながら神座が訊く。
ざわざわとした会場の騒がしさにやや当てられながら、ホマレは興奮を隠さずに言葉に乗せた。
『すっっごい迫力だった……!特に最後の末脚でぐあーッ!って上がってきたとことか、ほんとカッコよくて……っ。トレーナー、私今から学園に戻って走りたいです』
身振り手振りで嬉しそうに言うホマレを一瞥しながら神座は腕を組んだ。
「今日はトレーニング無しの予定です。その気合いは明日に取って置きなさい」
『ええっ……!?わ……っかりましたぁ……』
きっと他のウマ娘とトレーナーだったら「今から練習だ!」と言いながら興奮冷めやらぬうちに席を立っていただろう。 ホマレは両腕と肩を下げながら席に深く座り直した。
『はぁ。じゃあ、ウィニングライブの時間までゆっくりしときますか……それか買い物でもします?』
「いえ、混雑しているでしょうからしばらくここで待機しましょう。ついでに最終レースも観ますよ」
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