第9章 昼食
『……1個も2個も変わらないよね?』
言いながら2人に振り返る。
しかしそこには神座がトレイを持って立っていた。
「何が変わらないんでしょうか?」
『ひっ!トレーナー!?』
突然の神座の出現にホマレは驚いて後ずさる。
『な、何でここに……』
「カフェテリアを利用しているだけですが」
何を当たり前のことを、と平淡に答える神座の肩越しに、ギンガウェーブとアルターアワーが苦笑いを浮かべていた。
「あーらら」
「見つかっちゃったね……」
ホマレは神座の顔を窺ったが、相変わらずの無表情で何を考えているのか分からなかった。
昼食の指定を守らなかった自分に怒っているかもしれないという不安に、思わず尾が下がる。
「何を怖がっているんですか。余分なものを食べるときは申告すればいいと言っておいたでしょう」
言いながら、神座は淡々と自分の分をトレイの上の皿に乗せていく。
「揚げ物の油分は胃腸に負担がかかるので食べすぎは看過できませんが、その程度の大きさでしたら……あと1つまでなら許します」
どうやら怒ってないみたいだ。
ホマレはまたそっとトングを伸ばし、唐揚げを皿にもう1つ追加した。
『か、唐揚げ2個食べます……』
「よろしい。放課後のトレーニングを調整します。終了時間がその分遅くなるので予定は入れないように」
『はーい……』
そう返事をし、ホマレはアルターアワーとギンガウェーブに挟まれながらトボトボと席へ向かっていく。
しかし尾は先ほどよりも高く揺れていて、唐揚げ2個分の喜びを隠しきれていなかった。