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ラストラインを越えて

第9章 昼食


ある2月の昼休み。カフェテリアは多数のウマ娘や職員で溢れ返っている。
「うーん、今日何にしよっかな」
「炒飯かカレーか麻婆丼……いや、炒飯にカレーと麻婆をかけてみようかしら」
「味濃くない?」
アルターアワーとギンガウェーブが掲示されている献立表を見ながら話し合う。
「自分はかしわとうどんにしよ。ホマレはどうする?」
『私は……えっと、B定食と温野菜盛り合わせ』
ホマレは見ていた小さいスケジュール帳を閉じながら答える。
「ホマレさ、最近お昼悩まなくなったね」
『うん。神座トレーナーに何食べるか指定されてるんだ』
昼食の内容は常に一週間先まで決められている。
寮で出る朝食と夕食も把握されているし、間食は許されているものの報告するよう言われていた。
「えー!好きなもの食べれなくない?」
アルターアワーが信じられないような口調で返す。
トレーナーから食事制限を課されるウマ娘は少なくはないけれど、それでもある程度の自由はある。ほぼ全てを管理しようとするトレーナーは稀だ。
『へへ、そうだけど栄養とか偏らずに済むからありがたくもあるよ。余計なもの食べられなくなっちゃったけど……』
個人的には満足している、とホマレは微笑む。
しかしその時、すぐ側にあるセルフサービスのコーナーで調理師が声を上げた。
「はーい唐揚げ揚げたてだよー!大きい唐揚げ!早い者勝ちだよー!」
チェーフィングディッシュの中にざらざらと入れられていく大きめの唐揚げに自然とホマレの視線は吸い込まれる。
『あ、あ……唐揚げ、……』
ホマレは今しがた昼食を乗せたトレイを握りしめながら唐揚げを凝視した。
先ほど言った言葉と、目の前の誘惑の狭間で葛藤が始まる。
『(食べたい……でも脂質と糖質がオーバーする!)』
今日のB定食のメインはグリルチキンだ。十分美味しいけれど、サクサクでジューシーな揚げたての唐揚げと比べるとやはり魅力が劣る。
「1個くらい良いんじゃないかな?」
「そうよ。せっかくの揚げたてなんだから食べなきゃ却って唐揚げに失礼だわ」
何のためらいもなくギンガウェーブが自身の皿に唐揚げを3つ入れた。
そしてすぐホマレにトングを手渡す。
『そ、そうだね。じゃあ1個だけ……』
恐るおそる、トングを掴んで唐揚げを1つ皿に追加する。
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