第5章 初戦後
『じゃあ、さっそく明日から増強トレーニングですね……頑張りましょう、神座トレーナー……!』
帰る間際、ホマレは無理矢理にでもテンションを上げようと拳を上げる。
しかし神座は静かに首を横に振った。
「いえ、明日は――」
そんなやり取りの翌日。
キトウホマレはトレセン学園内にあるダンススタジオの前に来ていた。
少し捲れたジャージの裾を引っ張って正しながら扉の上のプレートを見上げる。
複数並ぶスタジオの中の1つ。授業で使う大部屋と違って少し狭い。前日の解散時、明日はここに来いと言われた。
『ダンスレッスン……』
スタジオを神座から放課後の集合場所として指定されたのは初めてだ。
『(トレーニングを差し置いてダンス……なんで……?)』
昨日のミーティングで散々坂路やら体幹やら聞いた後だっていうのに。
やや信じられない気持ちで扉を開けて入る。室内にはすでに神座がいた。
『お疲れ様です、今日ほんとにずっとこれなんですね……?』
「ええ。一昨日のウイニングライブの出来が気になったので」
腑に落ちない様子で室内を指差しながら訊くホマレに神座が返す。
『ちゃんとできてなかったですか?』
振り付けも歌詞も覚えていた。3着ということで、常にセンターの隣で踊る目立つ位置にいたとはいえ不足はなかったはずだ。
「残念ながら及第点未満です。振り付けや歌詞の間違いはありませんでしたが、あなたは間違える以上のミスを犯しています。今日はそれを正すためにここに呼びました」
『…………?』
神座にしては抽象的な物言いをしている。
ホマレは訝しげに片眉を上げた。
「もう始めるので準備をしてください。こちらはもう済んでいます」
『あっ、はい』
ホマレは手荷物を隅に置き、屋内用運動シューズの靴紐を結び直した。
壁一面に貼られた鏡の前で待機している神座の元に急ぎ足で駆け寄る。
『お待たせしました。今日もよろしくお願いしまーす』
「はい。では始めましょう」
まずはストレッチとウォームアップから、と神座はホマレに諸々の準備運動をさせていく。
『……あの、トレーナー。さっきの話、私なにが悪かったんですか?』
途中、アームサークルをしながらホマレが訊いた。