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ラストラインを越えて

第5章 初戦後


「前半ならまだ気温や気候が安定しているのでバ場の状態は"良"か"稍重"に留まりやすく、秋にデビューした経験数の少ないウマ娘たちで固まっていることが多いので……やはり前半がいいでしょう」
『決まりですね。あと2ヶ月……あっという間だろうなぁ……』
「ええ。油断すれば後半にも出走することになるので、当日までに仕上げきりましょう」
勝ちやすい条件のレースを狙ったとしても負ける可能性は十分にある。
ホマレは先ほど神座から聞いた後半の傾向について思い返し、身震いした。
『ちなみに……これからはどういうトレーニングがメインになりそうですか?』
ホマレは控えめに挙手しながら神座に訊く。
「中山は高低差のあるコースで、最後に急坂もあります。その対策として坂路を多めに組みます。それに十分なスタミナとパワーも必要です。徹底的に底上げし、足りないスピードを補いましょう」
顎に手を当て、少し考える素振りを見せながら神座が言う。
「あとは直線で脚を残せるよう、フォームを崩さないための基礎を鍛えます」
『フォーム……?前から見てもらってますよね?』
「ええ。ただし今のままでは中山の急坂には通用しません。体幹が弱ければ姿勢がぶれて余計な体力を使ってしまいます。最後で交わすには、より強固な基礎が必要です。なので体幹も念入りに鍛えていきましょう」
『うぅ……絶対キツイ……。けどその分、ちゃんとやれば勝てそうな気がしてきました』
トレーニングが全体的にハードになることが確定したものの、ホマレはやや納得しながら深めに頷く。
「あなたが崩れなければ先行勢の多くは直線で自滅します。無理に競らず脚を残し、最後で抜く。勝ち筋はそこにあります」
『他のコがバテるのを待って、そこで一気に勝ちにいく感じ……ですか。こう……バーッと』
ホマレが自身の手をウマ娘に見立てジェスチャーをしてみせた。
速度を落としながら進む右手を、左手がじわじわと抜き去っていく。
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