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ラストラインを越えて

第5章 初戦後


メイクデビューを終えた翌日の放課後。キトウホマレは、トレーナー室のテーブルで神座と向き合っていた。
「昨日はお疲れさまでした。今回は負けてしまったので、あなたが次に出られるレースは未勝利戦のみです。今回は次の目標について説明します」
『はーい……』
遠征の疲れがまだ引いていないホマレが控えめに返事をする。
「次に走ってもらうのは12月前半の中山に決めました。京都と同じくダート1800mです」
ここ数ヶ月分の未勝利戦の日程や内容がまとめられたリストをホマレの前に出し、神座がマーカーを引く。
ダートのレース自体があまり多くないようで、11月から年末までの期間には東京レース場と中山レース場で行われる3回しかなかった。
『……あれ、中山なら同じバ場と距離で12月後半にもレースありますよ? 他のグレードに挑むためにも勝たなきゃですし……練習期間は少しでも多い方がよくないですか?』
「そうしたいところですが、後半は避けた方がいいです」
マーカーが引かれたすぐ下の項目を指差しながらホマレが訊く。
それに答えながら、神座は12月後半の記述にバツ印を入れた。
「年末まで未勝利で残っているのは成績が安定しないか体質の弱いウマ娘が多い一方で、デビューが遅れた素質持ちや仕上がってきたタイプも混じってきます。それらと当たれば、あなたの勝率は一気に下がる。それに凍結防止剤などの影響で重めのバ場になる可能性も高いです」
淡々と語る神座に、ホマレは何度か相づちを打つ。
「一般的にはダートは水分を含んで締まっていた方が走りやすいのですが、あなたの場合はスピード不足が致命的になります。重バ場はむしろ不利に働くでしょう」
『へぇ……』
雨が適度に降った後のダートはいつもより速く走れる。ホマレにとってそうであるように、他のウマ娘たちにとっても好条件だろう。
神座の言う通り、重バ場になるとホマレの強みが活かしきれないレース展開になる可能性が出てくる。
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