第4章 メイクデビュー
『(あ……もう居ない)』
けれどすぐ、屋内に戻ろうとしている後ろ姿を見つける。
『(ゴールするまではちゃんと見てくれてたんだ)』
さっさと控え室へ帰っていく神座に目を向けたまま、ホマレはうっすら口角を上げる。
期待に応えられず不甲斐なくて堪らない気持ちと同じくらい、初めてのレースを走りきったことへの達成感と高揚感があった。
『(3着なんて今まで取ったことない……! まだまだ全然ダメな範疇だけど、明らかに成長できてる!)』
メイクデビューを通してやっと明確な希望が見えた。
誰からも見向きもされなかった自分にも、もっと強くなれる可能性がある。
砂を払いながら前に向き直る。
秋の日差しが眩しくて、自然と目を細めた。
『(次はもっと前で……1着でゴールしたい!)』
その胸の高鳴りが、敗北よりもずっと強く響いていた。