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ラストラインを越えて

第4章 メイクデビュー


神座はこの時点で速度を上げすぎると後半でバテるとも言っていたけれど、どんどん離れていく背中を見るとどうにも焦りが募っていく。
『(あ……坂だ)』
悩んでいるうちに向こう正面の半ばにある上り坂に到達した。
『(第3コーナーのとこでこの坂が下りになってて、そこから……)』
重心がブレ、ふらつきながら上っていく前のウマ娘たちを見ながらホマレは息を入れ直す。
上り坂の頂点を越えると、視界がぐっと開けた。
地面が落ち込むように傾き、身体が前へ引っ張られる。
『(この傾斜……思ったよりキツイ。勝手に速くなる……!)』
自然とスピードが上がり、風が頬を叩いた。
呼吸を整え、重心を落としながら姿勢を維持する。
『(トレーナーが言ってた通り……ここで慌てて踏み込んだら、最後がもたない。少しずつ……少しずつ加速していかなきゃ)』
下り坂の勢いを利用しながら、ホマレは脚の回転をわずかに上げる。
他のウマ娘たちも傾斜にスピードを乗せ、勢いよく坂を下っていった。
やがて坂が終わり、第4コーナーへ。
平坦な地面に勢いが殺されたのか、前のウマ娘たちが少し失速して団子状態になっている。
早仕掛けでバテた者。内が詰まって出られない者。外に膨らみすぎて距離をロスしている者。
進路を塞ぐように揺れる背が目の前に迫る。
『(ついた勢いを殺さないように……前へ!)』
あれに巻き込まれたら思うように進めない。
ホマレはわずかに外へ膨らみながらコーナーを抜け、直線に入った。
その瞬間、左右から砂が飛ぶ。
前を走るウマ娘がバランスを崩して外に膨らみ、別の1人がその隙を突いて割り込んできた。
ぶつかりそうになって咄嗟にホマレも少し進路をずらす。
『わ、わっ……!? 狭っ……!』
すぐ隣の脚音が近い。内から抜けようとした者はラチに閉じ込められ、戸惑ったようなか細い悲鳴を洩らす。
後ろからもひとり、勢い余って周囲のウマ娘に接触しかけている。
ホマレも加速のリズムを取りきれず、砂を踏む脚の動きも段々と雑なものなっていた。
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