第4章 メイクデビュー
メイクデビュー前日の昼過ぎ。
ホマレは神座とともに京都行きの新幹線に乗った。
『関西の方に行くの初めてです。なんか旅行みたいでワクワクしますね』
窓側の指定席に座らせられたホマレが嬉しげに言う。
車内に差し込む昼下がりの陽光に目を細めながら、滑るように遠ざかっていくビル群を珍しげに覗き込んで見ていた。
新幹線自体に馴染みがなく、乗り場の時点からずっとキョロキョロそわそわしている。
「到着まで2時間半ほどあるので、しばらくは明日のレースの予習に充てましょう」
神座が端末を取り出し、京都レース場のダートコースの画像を見せる。
「まずはおさらいから。この間教えた段取りを言ってみなさい」
『えーっとですね……最初、ここからスタートして……それで、直線が終わるまでに中団と内ラチを確保しつつ脚を溜める……んでしたよね?』
神座の顔をチラチラ窺いながらホマレが画像を指差して言う。
「ええ、合っています。続けなさい」
『そのあと……距離ロスが出るから、できるだけ内側をキープして曲がって……向こう正面の途中から上り傾斜でスタミナを削られないように気を付けて進む。で、第3コーナーの手前から下り坂になってるから……ここを下りるのに合わせて少しずつ加速していって、最後の直線に向けてスパート……!』
ホマレは第4コーナーの辺りで指を一気に滑らせ、ゴールの辺りまで突っ切らせた。
「良いですね。ただし、"少しずつ"の範囲を誤らないように。調子に乗って上げすぎると最後の200mで脚が止まります」
『はいっ、気をつけます』
ホマレの返事に神座は軽く頷く。
「京都のダート1800mはスタートから最初のコーナーまでが短く、位置取り争いが熾烈になりがちです。あなたは3枠3番で決まりましたが、他のウマ娘たちも必死に内を取りにいくでしょうから油断はできません」
スタートが遅かったり、外のウマ娘が内に切れ込んでくる流れで外に押しやられる場合はある。
今回の京都レース場のように最初の直線が短いコースでは頻発しやすい。