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ラストラインを越えて

第3章 方針


翌日の放課後。キトウホマレは授業が終わってすぐ、神座のトレーナー室に向かった。
『(これからの方針について説明するから来いって言われたけど……どうなるんだろ)』
不安半分、好奇心半分でそわそわとトレーナー棟に入り、2日ぶりに神座のトレーナー室の前に立った。
『神座トレーナー、ホマレです。入りますよ』
「どうぞ」
返事が聞こえ、ホマレは扉をゆっくり開ける。
『お疲れ様です。あ……椅子とテーブルだ』
部屋の一画にパイプ椅子と折り畳みの長机が設置されている。一昨日はなかったはずだ。
2つあるうちの1つの椅子にホマレが近寄った。
『トレーナーが自分で運んだんですか?』
「ええ。どちらかがずっと立ちっぱなしでいるわけにもいきませんからね」
『たしかに』
机や椅子を抱え無表情でトレーナー棟の階段を往復する神座の姿を想像しながらホマレは荷物を椅子の横に置く。
言ってくれたら手伝ったのに、とも思った。
『置いてくれてありがとうございます。なんだか一気にトレーナー室っぽくなりましたね』
神座が使うための備品しかない殺風景だった室内に他の物が増え、少し活気を感じる。
ホマレはいそいそとパイプ椅子に座り、鞄からメモ帳とペンを取り出した。
神座もデスクから紙を持ち、ホマレの向かい側の椅子に座った。
「では、今後について話します。質問などあったら遠慮なくするように」
『はーい』
神座が持っている紙を覗き込む。
昨日ホマレのデータを書き込んだ記録紙だった。
それを見ながら神座が説明を始める。
「まず……測定したデータをメインにあなたの得手不得手を探りましたが、スタミナはそれなりにあるみたいですね。心肺機能や筋持久力が高い一方、加速の質が低いです。スピードの出力が圧倒的に弱い。トップスピード、瞬発力、維持力ともに光るものがありません」
『そんな……』
脚が遅いのは分かってはいたけれど、改めて事実を元に突きつけられるとショックが大きい。
ホマレはやや落ち込みながらペンを握り締めた。
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