第2章 計測
どうせ他に自分を欲しがる人間はいなかった。
それを思うと、贅沢を言ってはいられない現状に自然と実感が湧いてくる。
少し前まで浮かんでいた解約の2文字も、今はすっかり萎縮していた。
不安も後悔も解消しきれてないけれど、唯一自分を選んでくれた神座に賭けるしかない。
「もう……っ、ホマレったら。あなたの掴んだチャンスをどうこう言いたくないけど……! ヤバそうだったら私でも誰でもいいから助けを求めなさいね。約束よ?」
肩を揺すられながらホマレがギンガウェーブを宥める。
『そんなに心配しないで、ギンガちゃん。たしかに神座トレーナーは仏頂面だし優しくなさそうだけど……』
同室に余計な心配をかけたくない。
なんとか安心させようとホマレは神座との会話を振り返る。
『勧誘のときもね、何週間も前から私のこと見てたらしいし、弱いウマ娘だからこそ育て甲斐があるって言ってくれたし……わりと、何て言うか……』
強いウマ娘を育てても予定調和でツマラナイと言ったり、担当にしたいウマ娘のことを最悪の素材呼ばわりしていたことも思い出す。
『んん、ちょっと…………だいぶ変わった人なだけ……かも?』
途中から首を傾げながらそう言葉を継いだホマレに、ギンガウェーブが険しい顔で指摘する。
「何のフォローにもなってないわ、ホマレ……!神座トレーナーが怖くて無表情な変人ってことしか入ってこない……不安要素しかない……!」
肩を掴んだまま項垂れるギンガウェーブにホマレは苦笑いを向ける。
結局その日はギンガウェーブの神座への印象をひっくり返すことができないまま終わった。